てらまっとのアニメ批評ブログ

アニメ批評っぽい文章とその他雑文

杉本克哉個展「YOU ARE GOD」展覧会レビューを寄稿しました

2021年2月24日から3月27日まで、東京・表参道のhpgrp GALLERY TOKYOで美術家・杉本克哉の個展「YOU ARE GOD」が開催されています。

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草を植えバスタブの中で祈る 1167x910x30mm Oil on canvas 2020

hpgrpgallery.com

彼はぼくがTwitterを始めた頃に知り合った10年来の友人で、ずいぶん長く作品を見続けてきたこともあり、今回展覧会レビューを書きました。

katsuya-sugimoto.com

以前に彼の別のシリーズについて書いた記事はこちら。

spice.eplus.jp

今回のレビューでは、作品の「意味」と「謎」をあえて対比させています。記事では触れていませんが、これらはそれぞれ「批評」と「考察」という似て非なる営みに対応するのではないかと思っています。

批評とは一般的に、作品の各要素を作家や社会に関する「意味」に還元して解釈していく営みです。他方で考察とは、作品のなかに不可解な「謎」を発見し、それを解くために語られていない設定をあれこれ推測する営みと言えるでしょう。

ぼく自身は学生時代に批評に親しんでいたこともあって、考察の意義や醍醐味というものがいまいちわかっていませんでした。それどころか、作品からくみとるべき「生きる意味」から目を逸らすための、いわば擬似問題にすぎないとすら考えていた。

しかし、最近になってようやく、そうではないのだと思い始めました。すべてを透明な意味に還元する批評的な態度よりも、世界に不透明な謎を発見する考察的な態度のほうが、場合によっては人生を豊かにすることもある。もちろん、それが行き過ぎると、あらゆる事象の背後に隠された設定を幻視する、いわゆる陰謀論者になってしまうわけですが。

今回のレビューを書きながら、そんなことをぼんやり考えていました。